多くの医院で行っている初診カウンセリングや治療提案、補綴カウンセリングといった各種カウンセリング。
今回は改めてその“目的” について取り上げてみます。
「むし歯で奥歯が痛いので治してほしい」と患者さんが言われた時、この言葉は目的ではなく手段です。
目的は奥歯の治療を行うことで得たいもの、解決したい問題となります。
例えば、痛みによって仕事に支障が出ているのであれば
“仕事に集中できるようになる”ことが目的であり、
その手段として奥歯の治療を受けて痛みを解消するという図式です。
各医院でカウンセリングシートを見させていただくことがありますが、
手段しか聞けていないことが意外に多く見受けられます。
これは目的を把握しなくとも、治療そのものは出来る歯科特有の背景があるのではと感じています。
確かに治療はできますが、目的を把握することで患者さんの治療に向かうモチベーションを適切に高めることが出来ます。
この“目的”は口腔内を見ても分かりませんし、レントゲンにも写りません。
患者さんに直接確認するしかありません。だからこそカウンセリングの時間を設けているのです。
カウンセリングを通して目的を把握するための質問のポイントは、
患者さんの日常、つまり生活背景をお聞きすることですが、
生活背景といっても漠然とし過ぎて難しいと感じている方もいるかもしれませんね。
そこでここでは、もう一歩踏み込んで質問の視点をご紹介します。
その視点とは“衣・食・住”です。
衣食住とは生活の三大要素とも言われ、言い換えれば私たち人間の関心事トップ3です。
“衣”である服は、第三者に見られるもの、つまり見た目に関係するものと言えます。
洋服にこだわりを持っているオシャレな人であれば、
それに相応しい美しい歯かどうかは治療法を決めるにあたって優先順位の高い検討事項になるでしょうし、
人前に出ることがある職業かどうか?も同様です。
“食”は歯科においては、最も直接的に関係する要素です。
「何でも食べられるようにお口の健康を守りましょう」よりも
「〇〇さんの大好きなお肉をいつまでも食べられるように3ヶ月に1回のメインテナンスを受けましょう」と、
この患者さんの好物を具体的に把握しておいた方が、心に届く可能性は高くなります。
“住”は生活における土台となる“環境や場所”、あるいはその方の考え方の土台である“価値観” と捉えてください。
朝起きてから夜寝るまでの中でどのようなセルフケアを行っておられるか?
生活の中で健康に役立つことを行っておられるかどうか、10年後にどのような口腔内になっていたいか?など、
患者さんの行動の動機に一番太く繋がっているものです。
人は「自分のことを分かってくれている人」に好感を抱きます。
歯の情報はもちろん大切ですが、更に衣食住まで聞くことができれば、信頼関係を築ける確率は大きく上がります。