医療の世界でよく耳にする言葉の一つである「インフォームド・コンセント」、患者さんと医師との間で、治療についての十分な説明が行われ、理解、納得、合意の上で治療を始めていく一連の流れのことです。
十分な説明を行う。とても大切であることは間違いありませんが、患者さんは医療の専門家ではありませんので、中々思うように伝わらない、理解してもらえないことも多いのではないでしょうか。
伝わらない原因を考えてみると、患者さんの理解力の問題や、説明内容そのものにそもそも関心が無い、つまり聞く気がない相手に伝えるのは至難の業です。
一方で、患者さんの関心を喚起できない原因が医療者側の“態度” にあるかもしれません。
今回、ご紹介する「マッチョ状態」は医療者や士業といった専門家が陥りやすい状態のことで、マッチョな態度になると、相手は嫌悪感を抱き、話している内容がどれだけ正しいことでも頭に入ってきません。
マッチョ状態とは、「あなたより正しい」「あなたよりレベルが高い」「あなたより知識を持っている」といったように、いわゆる上から目線で相手に臨んでしまう状態のことです。
この状態から発せられる言葉は無意識に高圧的な態度、言葉となってしまい、「ご存知ないと思いますが」とか「どうすればいいか説明しましょう」「あなたの問題を解決してあげましょう」「あなたのやり方は間違っていて」といったように、常に正しいのは自分である、という図式で言葉が繰り広げられ、表情や姿勢も、どこか相手を見下した態度になってしまいます。
患者さんの立場で考えてみると、当然そんな相手の言葉は入ってきませんし、最悪、二度と来院されないという結果になるかもしれません。
正しい知識と高い技術を持っていたとしても、それ以外のことで患者さんとの関係性が切れてしまう。それはとても勿体ないことであり、患者さんにとっても医院にとっても残念なことです。
このマッチョ状態は“無意識にそうなってしまっている”点が難しいところです。
自分では中々気づくことが出来ませんので、患者さんへの応対場面を録画して振り返ってみたり、周りの方に「私ってマッチョ?」と聞いてみるのもありですね。
そして、マッチョ状態を防ぐための言葉を意識的に使うこともポイントです。先ほどの例で言えば、
「ご存知ないと思いますが」→「すでにご存知かもしれませんが」
「どうすればいいか説明しましょう」→「ご提案させて頂いてもよろしいですか?」
「問題を解決してあげましょう」→「この問題をこれまではどのように解決してきましたか?」
「あなたのやり方は間違っていて」→「これからご提案する方法をあなたの確かな目で採用するかご判断ください」
といったように言い換えるだけでも、相手の印象は随分と変わってきます。
マッチョな体には憧れますが、マッチョな態度には気をつけていきたいものですね。