接客や営業職の経験が長かったこともあり、今でもお店や企業など、消費者の立場として利用する際、無意識にスタッフの方の動きを観察してしまう自分がいます。
「これは最悪だな」「その表現はおかしいだろう」とマイナス面に気づくことも多いですが、時に優秀で感動すら覚える人に出会うこともあります。
今回はここ最近でもっとも印象に残った素晴らしい方をご紹介します。
広島市内にあるお好み焼き屋さん、事務所から近いこともあり、デスクワークの日はたまに利用させて頂いております。
店の規模はお好み焼き屋さんにしては大きく、カウンター席が10席、テーブル席30席、お座敷16席と言えば、その規模感が伝わるでしょうか。その日の店員さんは10名ほどでした。
お昼どきという事もあり、店内は8割ほど席が埋まっており、あちこちから「すいませ〜ん」という声が飛び交い、新たに入店されてくる方、会計待ちをしている方もおり、いわゆる忙しい状況です。
カウンター席に通された私の視線の先に、厨房の奥で皿洗いをしている女性が見えました。飲食店であればどこにでもある普通の光景ですが、私の意識はすぐにその人に向いてしまいました。
何故ならば“とにかくお皿を洗うスピードが早く”まるで2倍速の動画を見ているような感覚です。早いだけできれいに洗えていなければ本末転倒ですが、定期的に光を当てて汚れのチェックもされており、その精度も高いことが分かります。「皿洗いの達人だな」と感じながら、メニュー表に気を取られ一瞬視線を外した次の瞬間、視線を上げると彼女の姿はそこにはありませんでした。
「ん?どこに行った?」と店内を見回すと、お水のボトルを持ってお客さんの水を順に注いで回っています。
一通り注ぎ終わると、すぐにまた皿洗いポジションに戻ります。すると今度は随分と離れた場所のお客さんが手を挙げており、瞬時にそこに気づいた彼女は走ってそこに向かいます。私の体感ではお客さんが手を挙げた1秒後には気づいている感覚です。とにかく広い店内のありとあらゆる場所に彼女が登場しており、他のスタッフの方々とはフットワークの次元が違うのです。
早い動きに意識が取られてしまった私は、何故、そんなに早い動き(気づき)が出来るのだろうか?に関心が湧いてきました。
その答えはとってもシンプルでした。皿洗いをしている時も、テーブルを片付けている時も、何をしている時も常に“店内を見回している”のです。
多くの場合、皿洗いをしている時はお皿だけを見ており、その分、他の事への反応は遅れてしまうものです。皿洗いはもちろん大切な仕事ですが、常にお客さんの方に意識が向いている。
「優秀な人だなぁ」と思うと同時に「この人が歯科医院の現場に入ってくれると助かる医院も多いのではないだろうか」とも感じました。
私以外にもそう感じる人はきっといるでしょう。近い将来に他業種からスカウトを受けたとしても何の不思議もありません。
意外にもこんな感じで次のキャリアの道が拓ける事ってあるものです。そう考えると、目の前の仕事への向き合い方も変わりそうですね。