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第一声で決まる

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      他県への出張の際にはビジネスホテルに宿泊することになります。時には、いつものホテルが満室で、利用したことのないホテルを選ばざるを得ないこともあります。
      まさにこんな状況が最近私にも起こりました。これが今回の体験の始まりでした。

      チェックインに長い時間を要した後、一息ついてから部屋を出ようとした時、鍵が見当たらないことに気づきました。
      「あれ?」と部屋中を探しましたが、どこにも見当たらず。もしかして廊下で落としてしまったかも?
      知らない人がいきなり入ってきたら恐怖でしかない!と不安が広がります。

      そこでフロントに連絡を取り、

      「すみません、鍵が見当たらないんですが、落とし物として届けられていませんか?」

      と尋ねたところ、
      フロントからの第一声は、

      「ああ、鍵を失くした場合は実費を支払っていただく必要があります」という返答。

      いやいや、私が知りたかったのは「落とし物として届けられていないか?」であって、鍵の紛失費用ではありません。
      その後、幸い鍵は見つかりましたが、この対応にはちょっとした違和感を覚えました。

      このホテルには連泊しましたが、最近のホテルでは、エコの観点から、清掃やシーツ、タオルの交換をゲストのリクエストがなければ行わないところが増えています。
      ただ、ややこしいのが、清掃の希望をどう伝えるかはホテルによって異なるところです。
      あるホテルでは清掃希望の札を掛ける必要があり、また別のホテルでは清掃不要の札を出すシステムの場合もあるのです。
      夜に戻ってきて、部屋がそのままだった時には、そのシステムを理解していなかった自分を責めることになります。

      しかし、せめてタオルだけでも新しいものに替えて欲しかった私はフロントに連絡を取ります。

      「すみません、タオルだけ新しいものに替えて頂きたいのですが、どうすればよろしいでしょうか?」
      とたずねた所、返ってきた第一声は
      「タオル交換ですか?ドアに交換希望の札は掛けましたか?」というまさかの質問返し。
      ここでも、問いへの回答ではなく、私の非を問う第一声でした。

      部屋の鍵も清掃希望の札も、そもそもの原因は私にあります。
      でも、だからといってもうこのホテルに二度と泊まることはありません。

      患者さんへの対応時も、その第一声はとても大切です。
      無意識に「正しさ」を押し付けてしまわないように注意が必要です。

      たとえば、当日キャンセルとなった患者さんへの第一声が
      「キャンセルの場合は前日までにお電話してくださいとお願いしたはずですが」
      というルールや患者さんの非を現した言葉では、それが正しくても不快感を生んでしまう事があります。

      「大丈夫ですか?何かお困りなことがありましたか?」といったように、まずは患者さんの状況の理解や共感を示す姿勢が大切です。
      これはスタッフ間のやり取りでも同じです。正しさよりも、思いやりを優先した第一声を心がけることで、より安全で安心な職場環境が作られていくことになります。

      正しさは、その言葉の通り、正しいがゆえに言葉のセレクトに遠慮がなくなることがあります。
      最初に思いやり、次に正しさ。この順番が信頼関係を築く方程式ですね。


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