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      「人は形にして見せて貰うまで自分は何が欲しいのかわからないものだ」
      Appleの創業者であるスティーブ・ジョブズの有名な言葉です。
      iPhoneを知らないのに「iPhoneが欲しい」と思うことは不可能であり、実物を目にして初めて「それ欲しい!」と思う訳です。

      先日、これまで撮影した写真をプリントする機会がありました。
      今の時代、撮影はデジタルカメラ、見るのもパソコンやスマフォの画面の中で紙にプリントすることはほとんどありません。
      それは撮られる側も同じで、撮影させていただいた後に「LINEで送ってください」と言われることはあっても「プリントしてください」と言われたことはありません。
      言い換えれば、写真のプリントは望まれていないのです。

      しかし、実際にプリントされた写真は、スマフォ画面の何十倍もの大きさで一人一人の表情はもちろん、その時の感情まで伝わってきます。
      色味も画面で見るのとは明らかに違うんですね。ご迷惑かな、邪魔になるかな・・・と心配しつつもお渡しすることにしました。

      すると「わ〜すごい!」「これは嬉しい」「早速飾ろう」など、予想に反してとても喜んでいただけたのです。

      写真プリントを知らない人は少ないと思いますので、冒頭のiPhoneの例と同じとは言い切れませんが、デジタル社会の今、プリントした写真が欲しいと思う人はかなり少数なはずです。それでも実際にプリントされた実物を目にすると「これ欲しい!」という気持ちが生まれてくることもある。

      この図式、結構色々な場面であることだと思いませんか。

      例えば、入れ歯しか知らない人は自ら「インプラントでお願いします」とは言いません
      インプラントという存在を知らないのですから当然ですね。
      そんな患者さんに対して「分かりました、では新しい入れ歯を作っていきましょう」では、患者さんに本当の満足を得ていただくことはできないかもしれません。

      また、たまに「保険か自費の希望」をたずねる項目を設けている問診票を目にすることがありますが、これまで保険治療の経験しかなかったり、正しい説明を受けたことのない患者さんは、ここで自費治療を選択される可能性はかなり低いです。
      補綴カウンセリングの中で、実物の補綴物や、実際の症例写真などもご覧いただきながら、自分の口腔内に入ったイメージを描けるようにしてあげることで、初めて「欲しい」と感じていただくことができます。

      このように「知っていただくこと」で患者さんの希望が変わることは珍しくありません。
      プロである皆さんと素人である患者さん、その知識の差は想像以上に大きいと考えた方が間違いありません。

      インプラントや矯正、ホワイトニングといった自費治療だけでなく、各種検査やメインテナンスなど、これらを知らない患者さんはまだまだ多くいらっしゃいます。
      高い治療を売ることが目的ではなく、患者さんが知らないことを教えてあげる意識で臨んでみてください。
      「そんな方法があるの?ぜひ受けたい!」と喜んでくださる患者さんとの出会いが多く生まれるはずです。


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