歯科医院運営

歯科医師としての引き際を考える。

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      先日、クライアント院長と

      「歯科医師としての引き際」の話題になりました。



      弊社の特徴の一つに、契約期間が長いクライアントが多い、がありますが、
      この院長とも、かれこれ15年ほどのお付き合いになります。



      当然ですが、院長は(もちろん私も)15歳という年齢を重ねてきており、
      少しずつ「いつまでこの医院を続けていくか?」「どう締めくくるか?」というテーマが
      頭によぎることが増えてきておられるようでした。



      締めくくり方は人の数だけ正解がありますので、一般論など意味がありません。

      この院長の場合は、少ないユニットで、一人の患者さんにじっくりと時間をかけ、
      治療だけでなく会話も楽しむ。
      アポとアポの時間も余裕を持たせ、丁寧に片付けと次の患者さんの準備を行えば、
      感染予防対策も更に高いレベルで実行出来る。
      そんな理想をお持ちです。



      一般の方から見れば、特別、難しくない理想に聞こえるかもしれませんが、
      保険診療がメインで、患者さんが多い流行っている医院になればなるほど、
      この理想とは真逆の日常がそこにはあります。



      一患者さんのアポは30分単位、ドクター1名で数台のユニットの掛け持ちは当たり前、
      少しでも歯車が狂うと患者さんを待たせてしまうことになる。

      本当はもう少しゆっくりしたいけれど、保険診療での単価を考えると、
      今の患者数を診なければスタッフに満足いく給与を支払うことが出来ず、
      最新設備の導入も厳しくなる。


      そんなバタバタな状況で午前を終え、昼休憩は少しでも睡眠を取らなければ、夕方前にへばってしまう。


      大袈裟に聞こえるかもしれませんが、これが現実です。



      誤解ないように付け加えれば、それが不幸だとかダメだとか言いたい訳ではありません。
      朝から晩まで多くの患者さんに囲まれて過ごすことに
      やりがいと幸せを感じておられる歯科医師も
      多く存在しますし、
      そもそも、その状態は多くの患者さんから支持されていなければ叶わない事でもあります。




      しかし、冒頭のように、誰しも年齢を重ねます。



      体力も落ちてくれば、視力の問題も出てくる。
      気力は若い時と変わらずあっても、体がついてこない時も必ずやってきます。



      まだまだ若いもんにゃ〜負けん!

      という気合いだけでは超えられない現実を受け止めて、戦略を練ることができるかどうかも、
      ある意味、院長の「器」です。



      そんな「理想」と「現実」を抱く中、
      今回のコロナウイルスが起こりました。



      スタッフと患者さんの安全を最優先し、
      一時的に患者さんの数を大幅に減らす決断をされた院長。


      あれだけ患者さんが溢れていた医院は、これまで経験したことのない落ち着いた状態に。



      その甲斐あって、患者さんからもスタッフからも感染者を一人も出すこともなく、
      緊急事態宣言が解除。


      元通り患者さんを呼び戻すことが出来る段階になりました。



      さあ、アフターコロナに向けてがんばるぞ!

      という段階で、ふと、あることに気づきます。



      「今って描いていた理想の状態なのでは?」

      です。



      余裕を持ったアポイントとチェアタイム。
      ほとんどない待ち時間。
      患者さんと雑談も出来ている。
      これはまさにクライアントが求めていた状態だったのです。


      元に戻すことは、ある意味、簡単かもしれないけれど、
      ここで戻すことが正解なのだろうか?



      歯科の予約は数カ月先まで埋まっていることが珍しくありません。
      予約の体制を変えるだけでも、具体的な計画と時間がかかります。
      もしかしたら、やるならば今なのかもしれない。




      もちろん、保険診療を軸としていくのであれば、人件費を始めとした固定費をどうするか?
      患者さんの数をどう絞っていくか?という課題はクリアしなければなりません。

      ただ、ここで大切なことは「お金を回していく」ことではなく、
      「歯科医師という人生の大半を捧げてきた職業をどう締めくくりたいか?」です。



      誰もが年齢を重ねていくということは、必ず終わりがくるということ。

      数を追いかけて理想と離れた日々を倒れるまで続けるのがいいのか、
      締めくくりとして、最後は自分の理想の診療を手にするのか。



      最終決断は院長でなければ出来ませんが、私は理想を支えるサポートがしたいと思っています。



      患者さんを増やし、経済的に医院を反映させていくことが正解な時もあれば、逆の場合もある。
      それはクライアントの

      「ライフステージ」

      によって違います。

      今回のコロナウイルスは、もちろん負の面も多くありますが、人によっては、
      今後の人生を望む方向に舵を取る大きなきっかけでありチャンスとなる人もいる。



      そこを見誤らないこと。

      ユニット数や患者数を減らし、売上を下げることが正解のコンサルティングもある。

      さあ、コロナ明けです。取り戻していきましょー!

      という杓子定規なサポートだけはしない。



      そう自分に誓った一日でした。






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