今からかれこれ20年以上前、百貨店の中にあるメガネ会社に勤務していたときの話。
夏の時期だけ1階の化粧品売場の横に小さなコーナーを作り、サングラスの販売を行っていました。
週に1度か2度、そのコーナーの担当が回ってくるのだが、当初はその日がとてもイヤでイヤで仕方なかった。
右も左も化粧品売場のスタッフの方々に囲まれ、お客さんの層も明らかに違う。
お会計を行うレジを打つにも普段接点のない百貨店スタッフにお願いしなければならない。
あくまでも仮設コーナーということもあり、立つスペースも普段は通路として使われているような場所。
日頃過ごしているメガネ売場とは大きな環境の違いがあり、とにかく落ち着かない・・・。
それでも仕事。
イヤだ・・・行きたくない、お腹が痛い・・・とは言えず、心を無にして業務をこなしていた事を思い出します。
そんなイヤイヤなスタートでも人間には適応力があります。
回数を重ねるにつれて周りのスタッフの方々とも打ち解け、どこになにがあるという、そのフロア特有の事情も分かってくると、あれだけイヤだったサングラス担当日が楽しみにすらなってくるのだから不思議なものです。
「サングラスを販売する」この事実は変わらないが、イヤが楽しみに変わる。
この違いはどこにあるのだろうか。
それは、ここに自分がいても良いという「居場所」ではと思う。
日々、各医院でお仕事をさせていただく中で、残念ながら退職という選択をされる方もいます。
その理由を尋ねると、「求められる業務が覚えられなかった」「自分がイメージしていた仕事ではなかった」という業務に直結した理由もあれば、院内での人間関係が原因で退職していく人もいます。
理由は違えど、そこに共通している事は、医院に自分の存在価値、つまり「居場所」を見出すことが出来なかったという事ではと感じるのです。
意外なことに言葉では「忙しくてツライです」とは言いながらも、その責任もあってか「忙しすぎるから辞めたい」という人は僕の記憶の中ではいません。
もちろん、家庭の事情や新たなキャリアアップのための退職もありますが、それもある意味、医院での居場所以上の居場所が他に出来たからと言えます。
今年も春に各医院に多くの新人さんが入ってこられました。
多くの方が医院にも慣れてきて、自分の居場所、存在価値を見出しつつある。
しかし、一方では僕のサングラス担当のように、落ち着けない日々を過ごしている人もいます。
最終的には自分の居場所は自分で作っていかなければならないが、先輩たちも「ここがあなたの居場所だよ」と表現してあげることが大切ではと思う。
そんな承認の風土がある医院にこそ、人は長きに渡って働きたいと思うものです。