テレビやネットを見ていると、元気になるニュースを見つけるまでに、
気分が落ち込むニュースが怒涛のごとく目に飛び込んでくる今日このごろですが、特にここ最近は
「権利」と「義務」
の2つの単語を目にすることが多いなぁと感じています。
「それは国民の権利だ」とか
「それは国の義務だ」とか
「会社としての義務を果たせよ」
「従業員の権利はどうなるんだ」
といったものです。
この
「権利と義務」
今に限らず、職場でもよく出てくる言葉です。
歯科医院のサポート業務の中で、”就業規則の作成、浸透” を社会保険労務士の協力を得ながら取り組ませていただくことがこれまで何件もありましたが、これなんかまさに「権利と義務」のオンパレードでありカーニバルです。
その代表的なものが、
「有給休暇」
です。
有給は今や取得させなければならないものですので、一昔前のように、
「歯科のような中小零細企業は有給なんてあってないようなもんだ」
「有給ってなに? それって美味いのか?」
とはいきません。
経営側の立場からすれば、ただでもスタッフが少ない状態で頻繁に有給を取得されるのは困るのが現実ですが、せっかく取ってもらうのであれば、経営者と従業員、それぞれが気持ちよく消化したいものです。
そこに向けて、院内で共有しておきたい価値観、それが、
「権利と義務の関係」
です。
この権利と義務は、山と言えば川!というように、合言葉のような関係です。
権利を主張すれば義務が返ってきますし、義務を主張すれば権利が返ってきます。
単純な例で言いますと、
スタッフ:「院長!有給ってスタッフの権利ですよね?」
院長:「(イラッ)権利の主張をする前に、君たちは義務を果たしているのか?」
というように、さも当たり前のように権利を主張されると、反射的に義務を求めてしまうものです。
この関係性を踏まえると、伝え方のコツが見えてきます。
スタッフ:「有給を皆が取得できるように、診療体制を整え、売上も落とさないようにしていくことが私たちの義務ですよね」
院長:「いや〜、そう考えてくれることが嬉しいね。でも、有給はスタッフに与えられた権利なんだから、取得してもらってもいいんだよ」
となる可能性が高まりますし、
院長:「有給はスタッフの皆さんの権利だからね。ちゃんと取得できる環境をつくっていきたいね」
スタッフ:「そんな風に私たちのことを大切に考えてくれて嬉しいです。そんな院長の気持ちに応えるために、私たちも義務を果たさないといけませんね」
と、発する人が逆になっても同じです。
こう書くと、何やら上辺のテクニック論のように見えてしまうかもしれませんが、
「この言葉を使えば、どういう言葉が返ってくるか?」
を予想せずに感情のままに言葉を選び、それがず〜っと尾を引いてしまうケースを何度も目にしてきました。
院長とスタッフは他人です。スタッフ同士も他人であり、家族のような土台がある関係性ではありません。
誤解を恐れず言えば、「私たちはチームで固い人間関係で結ばれている」と言っている組織や人ほど、言葉は省略されがちであり、その言葉が「どう伝わるか?」への注意が希薄だったりします。
患者さんに対してはコミュニケーションの達人なのに、職場の人とは何故か上手くいかない人はその典型です。
良い意味で「他人」と捉えることで、言葉選び一つを取っても慎重になると思うんですね。
「これは理想論だなぁ・・・」と思ってしまうとすれば、その思考が一番危険です。
患者さんにできるのであれば、職場の人にも必ずできます。
権利と義務だけに限らず、
「こう言えば、こう返ってくる」
合言葉として覚えていただくと嬉しいです。