「相手の立場に立って考える」
人に関わる仕事をしていると、この言葉は頻繁に耳にしますね。
その言葉の通り、これはとっても大切な心掛けですが、注意していないと、
それが全く出来ていない自分に気づけないことがあります。
以前、何気なくお笑い番組を見ていた時のことです。
失礼ながら何の番組だったか、どの芸人さんだったかは忘れてしまいましたが、
“ベストセラー作家と偶然カフェで出くわしたファンとのやり取り”という設定でした。
憧れの作家に出会うことが出来たファンは、必死にどれだけファンであるかを興奮気味に語ります。
これまで読んだ本の感想はもちろん、今この瞬間もカバンの中に著書を持っていて、
その本を読むためにこのカフェに来たのだと伝えます。
作家もその姿に喜び、二人はお互いの席に座り、作家は執筆を続け、ファンは本を開きます。
次の瞬間、ファンはパラパラ~と数秒で一冊の本を読んで(眺めて?)しまいました。
その光景に驚いた作家は、ファンに向かって、
「今、読んだの?」と聞くと、
ファンは笑顔で
「ハイ!読みました」と答えます。
信じられない作家は「いや、そんなことはないはずだ。ではどこが印象に残った?」
と聞くと、ファンは細かい描写の場面を詳しく説明をして、作家を驚かせます。
どこか半信半疑な気持ちを持ちながらも、作家は執筆に戻ります。
一方ファンは次に3冊の本をまとめて持ち、読む体制に入りました。
イヤな予感がした作家は、慌てた口調でこう言います。
「いいか、、その3部作は構想に5年もかかっているんだ、5年だぞ!」
「あ、そうなんですか!」と無邪気な口調で作家の意図などは全く意に介さず、
3冊の本をこれまた一瞬で読んでしまうのです。
文字にすると、この面白さは伝わらないかもしれませんが、私にとっては笑えるようで笑えないコントでした。
実は私のデスクの横には、買うだけ買って読めていない結構な数の本が積まれています。
積まれている状態そのものが結構なストレスとなっており、
この本をどう読むか?の解決策として以前からずっと習得したいと思っていたスキルが「速読」でした。
速読といってもただの速読ではなく、このコントのように一瞬で読んでしまうという魔法のような?スキルです。
さて、ここで言いたいことは、本を速く読むことを否定している訳ではなく、
冒頭の「相手の立場に立って考える」ことの難しさです。
デスクの横に積まれている本の著者も、構想から出版に至るまで何年も時間がかかった人もいるでしょうし、
それこそ心血を注いで書き上げた人もいるでしょう。
そんな著者がパラパラ~と一瞬で読まれてしまう姿を目の当たりにしたとしたら・・・結構複雑な気持ちかもしれません。
人は自分の中の目的意識が明確になればなるほど周りが見えなくなってしまうものなんだな・・・と自分の死角に気付いた出来事だったのです。
まさかコメディからそんな学びが得られるとは・・・。世の中、どこに人生のヒントが転がっているか分からないものですね。