自分の好きなことを仕事にしたい。
理屈よりも本能に突き動かされて独立を決意した2005年。
あれから13年が過ぎた。
当時は何の根拠もなく自分の力を信じていた。
周りには「独立なんかして食っていけるのか?」と心配する声も少なくなかったが、当の本人は上手くいかない、という不安など微塵もなかった。
好きなこと、やりたいこと、が与えるエネルギーは当人の実力をも上回る。
上手くいくことは当たり前であり、歯科の世界で仕事ができる喜びや期待感が心の100%を占めていた。
正直、今考えるとその甘さ加減はこっ恥ずかしい。
もし、タイムマシンがあれば、13年前の自分に会いに行き、
「13年後のお前なんだけど、その根拠のない自信は恥ずかしいからやめなさい。業界のことも何もわかっていないし、やり方も自己流すぎる。」
と止めたくなるが、13年前の自分はきっと目をキラキラさせながら
「大丈夫、俺、いけますから」
と言い放つに違いない。
こっ恥ずかしいけれど、あの当時の根拠のない自信があったからこそ、今もこうして存在できている。
もちろんそこには、よちよち歩きで危なっかしい駆け出しの僕を歩かせ、見守り、許容して下さった、クライアントを始めとする周りの方々の支えがあったからこそなのは言うまでもない。
ただ、あの根拠のない自信が瞳から溢れ出していたからこそ、「こいつにやらせてみよう」と許せていただけたのではとも思う。
それも好きなこと、やりたいこと、が放つ理屈を超えるエネルギーかもしれない。
この13年間、自社のことは二の次三の次だった。起業家としては確実に失格だ。
会社をこうしたい、何年後までに年商◯億、というカッコいいビジョンなどなく、クライアントのホームページは制作するが、自社のホームページは無いという状態が今まで続いた。
僕にとってはクライアント医院の発展こそがビジョンだったのだ。
この思いは今も変わっていない。
これからも変わらないと思う。
思いは変わらないが時代は変わる。
ホームページがあることで信用を得られてきた時代もあったが、今はホームページがないことで信用を得られない時代となった。
ありがたいことにクライアントから新規のクライアントをご紹介いただくことがある。
「紹介したいのだけど、河辺さんの事をどういう言葉で紹介したらいいかをいつも悩む。コンサルタント、というのも違う気がするし、うちのスタッフというのも違う。ホームページがあれば、『それを見てみて』と言えるのだが…」
こんなことを言われることが何度もあった。
これは本当に申し訳ないことだった。
「ホームページもないような会社に仕事を依頼しているの?」
もしかしたら、そんな迷惑すらかけているかもしれない。
それがホームページなるものを作ろうと思った動機の一つ。
二つ目の理由は「断捨離」である。
当然のことながら、希望や心配事、そして正しさも、クライアントによって全く違う。
A歯科医院では正しいやり方であったとしても、B歯科クリニックではあり得ない方法であることも珍しくない。いや、ほとんどそう。
毎回、僕自身も経験したことのない「課題」というギフトが現れる。
経験がないので、調べる、聴く、やってみる。この繰り返しの日々だった。
独立した当初、クライアントから「ホームページの提案を受けているんだけど」という相談があった。
それはリース契約での提案で、確か毎月3万円を72ヶ月支払うという形だったと思う。
総額216万円也。
ホームページの相場は知らなかったが、それでも200万オーバーはあり得ないことは分かった。
すると
「おまえ、作ってみたら?」という心のささやきが聞こえた。
次の瞬間、
「僕がやってみましょうか?」と言葉にしている自分がいた。
その帰り道に書店に寄り、「できる!ホームページ」という本を買って帰った。
1ページ目から順に練習し、なんとかその医院のホームページを完成させた。
今、見れば素人感満載のホームページだが、当時はそれでも十分だった。
かかった費用は書籍代の1500円。
そして、ホームページの相談にも乗れるというおまけがついてきた。
現在のクライアントの7割のホームページはうちで制作させていただいたものだ。
時代の流れと共にWEB関係の技術は高度な知識や技術が求められるようになり、現在は構成や文章を僕が担当し、デザインやコーディングは信頼できる専門家にお願いしている。
できることとできないこと、その見極めも経験の中で基準が出来てきた。
今の世の中、自分ができないことができる人を見つけることは難しくなくなった。ただし、そこには人を見極める目が必須ではある。
上記のホームページはほんの一例だが、今の僕の中にある知識や技術、考え方はその繰り返しによって培われたものが全てである。
取り組みが続かないという問題を抱えた医院があれば、アクションプランの立てかたやToDoリストを工夫したり、報連相の訓練をしたりと、どうすれば続くか、と院長をはじめスタッフの皆さんと試行錯誤する。
スタッフマネジメントの問題があれば、院長だけでなくスタッフとも面談を行うことで、その問題を立体的に見えるようにしてみる。その上でミーティングから朝礼のあり方、普段無意識に使っている言葉までスポットを当ててご提案する。
(ちなみにここ数年はスタッフマネジメントの取り組みの土台は就業規則の整備と活用だと考えている。この辺のことはまた別の機会に)
こんな試行錯誤の毎日を10年以上も行っていると、頭の中はパソコンの中に埋もれてしまったファイルのように、どこに何があったかが分からなくなり、存在そのものを忘れてしまうことも珍しくない。
ホームページを作るプロセスは思考の断捨離になる。
決してノウハウをまとめるとは違う。
断捨離を通して、自分の価値基準が更に明確になり、迷いが少なくなる。なくなることはないけれど。
このコラムを含め、ホームページ内には一見、ノウハウに見えるものもあるかもしれない。
他院で上手くいった事例もあれば、僕の主観的な考えも表現していく予定だ。
ただし、これはその医院だから上手くいったことであり、他の医院では全然機能しないこともありうる。
例えるならば、書かれていることは料理でいう「材料」であり、どう調理するかはその人による。
誰も使おうとしない材料でむっちゃ美味い料理を作り上げる人もいれば、その逆もありえる。
料理を食べさせたい相手が誰か?によっても、作るべきもの、そこにかける時間も違ってくる。
「自分ならばこの材料、素材を使ってどう料理するか?」
という視点で見ていただくと、あなたにしか作れない最高の料理が仕上がるかもしれない。
さて、
そんなこんなで作ったホームページ。
始めてみます。