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      「あの人はいつも私の指示に従わない」とか、「私が頼んだ時は動いてくれないのに、Aさんが頼むとスムーズに動いている。同じことを言っているのになぜ?」そんな風に感じたことはありませんか?今回はなぜ、そのような事が起こるのか?のメカニズムを取り上げてみます。

      例えば、あなたが後輩に「あそこの棚を片づけておいて」と伝えたとします。それを受けた後輩は「はい!」とその時は言ったにも関わらず、いつまで経っても片づけようとしません。しびれを切らしたあなたは「片づけておいてと言ったよね?どうしてやらないの?」と聞くと、後輩は「え?すぐだったんですか?手の空いた時で良いのかと思って・・・」と戸惑った表情で答えます。

      先輩が片づけてと言ったんだから“すぐに”動くべきでしょう!という人もいれば、いつまでにと言っていないのだから“手の空いた時で良い”でしょ?と思われた人もいるかと思いますが、この“すぐに”“手の空いた時で良い”があなた独自の“解釈”です。



      このように私たちはとても不完全な言葉で日々コミュニケーションを行っており、不完全な部分は個々の解釈で判断しています。全てを言わなくても分かってくれる人というのは、あなたならこう解釈するだろう、とあなたの事をよく分かっている人か、解釈の基準が近い人ということになります。

      そのように分かってくれる人ばかりならば苦労はしないのですが、そうはいかず、むしろ自分の解釈とは違う人のほうが多いのが現実です。相手が自分の解釈に合わせてくれるのを待つよりも、「“すぐに”あそこの棚を片づけてもらえる?」と自分が解釈のズレを防ぐ言葉を使う方が、結果としてストレスは少ないかもしれません。



      更に、もう一歩高いレベルのコミュニケーションは、そこに“前置き”を付け加えます。

      「ごめん、自分で片づければいいんだけど、今、手が離せなくて・・・申し訳ないんだけどすぐにあそこの棚を片づけてもらえる?」と、前置きの言葉を使うと、更に相手はあなたの希望を受け入れてくれる可能性が高まります。

      この前置きの作り方のコツは“きっと相手はこう思うだろう”という事を先にこちらが言葉にする事です。

      片づけを頼む → え~めんどくさい、自分でやればいいじゃない・・と思うだろう。という相手の思いをこちらが先に言葉にするのです。



      ネタバレとなりますが、私も日頃、この前置きを頻繁に使います。特に歯科の専門領域の提案や意見を言葉にする時です。私は歯科の診療現場で働く人間ではありません。ですから、人によっては、それがどのような内容であったとしても“歯科医師でもない人に言われてもね・・・”と思われがちです。

      そこで“歯科医師でもない私が言うのもなんですが”と相手の思いを先に言葉にするようにしています。

      これはスキルとも言えますが、相手がどう思っているか?を想像することが土台となります。つまり、相手を思いやる気持ちの上に成り立つコミュニケーションスキルなのです。


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