新型コロナウイルスの流行、収まる見通しが中々つかない中、皆さんも不安の中で日々の診療に当たられていると思います。
当然のことながら、これは患者さんも同様で、怖くて来院をやめる人もいれば、治療途中なので仕方なく、
あるいはどんな状況でもメインテナンスは大切、と不安を抱えながらも来院されている人もいるでしょう。
そんな患者さんに対して「歯科への来院がどれだけ大切か」を訴える情報発信を多くの医院が実践されています。
これ自体は言うまでもなくとても大切なことです。
ただ、その対象者によって「表現」には工夫する必要があります。
コロナに限らない話ですが、表現には、ざっくり分けて2つのパターンがあります。
1つ目は“リスクを伝える”ものです。
「むし歯が更に進行してしまう」
「歯周病がウイルスや細菌の感染リスクを高める」といった、
いわゆる患者さんの恐怖心に訴えるものです。
2つ目は“メリットを伝える”ものです。
「行っている感染予防対策を具体的に解説する」
「口腔ケアが感染予防に効果がある」
「マスクをしている今は矯正治療のチャンス」といった、
患者さんが得られるものを表現していくものですね。
どちらが正しい、間違っているではなく、受け取る側の考え方や状況によってその解釈は違うという前提はありますが、
ここでは一般論として、この2つをどう使い分けるか?を考えてみたいと思います。
まず“リスクを伝える”パターンです。
恐怖や不安、もっと言えば脅しをすることにより、こちらの思う通りに動いてもらおうという考えですが、
強すぎる脅しは逆効果になる、ということが心理実験でも実証されています。
“来院をやめよう”と考えている人が“リスクを伝える”パターンで情報を受け取った時、
その内容によっては「そんなこと言って、感染したら責任とってくれるのか?」とかえって反感を生んでしまうかもしれません。
そう考えると来院を促す情報発信(ホームページなど)には“リスクを伝える”内容に偏らず
“メリットを伝える”内容も併記する必要があることが分かります。
一方で“リスクを伝える”ことが相手の心にスッと届く場合もあります。
それは既に来院されている患者さんです。
「歯周病が感染リスクを高めることが分かっています。こうして来院いただけて良かったです」
「ここで治療を中断してしまうと、かえって治療回数が増えてしまう所でした」
といった声掛けは大げさに言えば患者さんの勇気ある行動を肯定し「不安だったけど来てよかった」という安心感につながります。
まとめます。
“目に見えない相手に伝える時はリスク(脅し)表現に偏らないこと”
“目の前にいる相手に伝える時はリスク表現がプラスになることも多い”
ということです。言葉って難しいけれど奥深いですね。