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やべえ!この医院ヒント一杯だわ!
とメモを取り始めた私でした。
治療に来たつもりが、医院見学の視点にすっかり変わってます。
そうこうしていると、看護師さんに「かわべさん、こちらでどうぞ」と呼ばれました。
おお・・・次のヒントの予感。
看護師さんに呼ばれ、部屋に入ると、そこは検査室のようでした。
「ここで2つの検査を行いますね。肺活量の検査と鼻呼吸ができているかどうかの検査です。」
肺活量の検査は確か人間ドックでも毎年受けている検査です。
結果は可もなく不可もなくのいたって標準。
あ、標準でいいのか・・・。こういう数値が出る検査は体力テストのノリでつい記録を出すことに意識がいきます(いきません?)
鼻呼吸の検査はあまり良い結果ではないようでした。
(いや、今日はたまたま鼻詰まりのような感じでして、いつもはそんなことはなく・・・)
とやはり記録に意識がいくのでした。
そして看護師さんから ”2つの提案” がありました。
1つは「睡眠日誌」です。
このように、その名の通り日々の睡眠の記録をつけていきます。
歯科の世界で言えば、唾液検査を導入されている医院に多い「食生活記録表」のような感じです。
自分の睡眠の記録なんてつけたことがない人のほうが圧倒的に多いと思いますが、こうして可視化することで否応なしに睡眠に意識がいきます。
これを毎日つけるようにという指示を受けます。
とっても大切なことだというのは頭では理解していますが、手書きで地道に書き込んでいくのは、正直 めんどくさい・・・と感じてしまうのも事実です。
スマフォのメモにつけていこうか・・・と思っていると次の提案です。
2つ目「いびきラボ」です。
これはスマフォ用のアプリで、寝る際にアプリを起動しておくと、いびきの状態がグラフとして記録されるものです。
しかも、いびきをかいたら自動で"録音”されるようで、普段は中々聞くことのできない自分のいびきを聞くことができます。
スマフォに保存できますので、散歩やジョギング、ドライブでのBGMにも使うことができるのです。
うん、これは簡単、出来そうだ。
無料版と有料版があるようですが、看護師さんからの、
「できれば有料版のほうがいいですけどね〜。では、また少し待合室でお待ちください」
と、再度待合室で待つことに。
私の手には
「睡眠日誌」と「アプリの紹介が書かれた紙」
があります。
イスに座ると同時にスマフォを取り出し、
「いびきラボ」のインストールを始めたのは言うまでもありません。
当然有料版です。
インストールが終わると、早速起動、適当にタップしながら使い方を探っていきます。
そしてまたいつの間にか10分ほどの時間が経っていました。
ここでも、
「待ってる間に予習しといてもらうべし」
が大活躍です。
「歯科での待合室でもできることを探すべし・・・」
とメモを取っていると、
「かわべさ〜ん」
とまた呼ばれます。
いよいよ診察か!と思ったら、診察室とは違う部屋に案内されます。
大きなテレビモニターといくつかのイスが設置されたその空間は、ちょっとしたセミナースペースのようでした。
「どうぞ、おかけください」
と促された私は、1列目のセンターのイスに座りました。一番ええ席です。
「DVDを観ていただきますね。」
と手慣れた様子でDVDプレイヤーを操作し、再生が始まったのを確認された看護師さんは部屋を出ていかれました。
部屋には私ひとりです。
再生されたのは、睡眠時無呼吸症候群を特集したテレビ番組の録画です。
睡眠時無呼吸症候群がどんだけ恐ろしい病気なのかということを、あの手この手の表現で訴えてきます。
ここで気づき。
「良いおどしをするべし」
以前、とある大御所の方に、おどしには"良いおどし”と"悪いおどし”があると聞きました。
良いおどしは、救ってあげることができることで、悪いおどしはそれができないことだと。
簡単な例で言えば、歯がある人に歯を失う恐ろしさを伝えるのは"良いおどし”で、既に歯を失ってしまっている人に同じことを伝えるのは”悪いおどし”であり、ある意味残酷なことかもしれません。
体はお金を払って得たものではないこともあり、その大切さを意識しづらく、失って初めて気づくことも少なくありません。
そんな人には耳障りの良い言葉よりも、"良いおどし”のほうが、その人の行動を変える確率は上がってきます。医療はサービス業だとも言われますが、きちんと自分を変えてくれる、治してくれることが最大のサービスですね。
さて、DVDに戻ります。
40分ほど観ていると、看護師さんが部屋に入ってこられ、
「かわべさん、そろそろですので、待合にお戻りください」
とのこと。番組の途中でしたが、DVDはそこで停止となりました。
そして待合で待つこと数分、
「かわべさん、どうぞ〜」
とドクターに呼ばれます。
最初に書いた4枚の問診票をじ〜っと眺められていたドクターは、開口一番、
「寝てないね〜!」
そこから今後の具体的な検査や治療のことが説明されます。
やや難しい説明もありましたが、ちゃんと理解できます。
なぜなら、この診察室に入るまでに
本を1冊読み、
睡眠日誌の説明を受け、
アプリを入れて、
DVDも観た(途中までだけど)
すっかり睡眠時無呼吸症候群に、それなりに詳しくなっている私がそこにいるのです。
「DVD観ましたよね。あれね、いい番組なんですよ。まだ途中だったと思うので、また次回続きを観てもらいますね」
そこで診察は終了。
診察は5分でした。
気づきです。
「人が直接説明することが、患者さんの理解に必ずしも繋がる訳ではないことを知るべし」(無理やりでも「べし」を使いたい)
お気づきの方もいると思いますが、ここまでのプロセスで、
1.その医院のオリジナルツールは1つもない。
2.90分ほどの滞在時間の中で、人が直接関わったのは、検査(肺活量、鼻呼吸)の10分と、ドクターの診察5分のみ。
この2つは大きなポイントであり、歯科でも参考になります。
ツールの目的は何か?というと、伝えたいことを患者さんに伝えることです。それが既製品で補えるのであれば、時間と手間をかけてオリジナルにこだわる必要はありません。
マンパワー不足が叫ばれる中で、説明という時間をどれだけ削減できるか?も重要な検討事項です。この医院のようにできるだけ人が介する時間を減らすことで、効率的にできることはまだまだありそうです。
「人が話すからこそ良い」
という面ももちろんありますが、人が話す=表現力によって差が出るということでもあります。そこは表現のプロが作った書籍やDVDの方が安定して伝えたいことが伝わるとも言えます。
そして、それが待ち時間を待ち時間と感じない役割もしてくれます。
ドクターの「DVDの続きをまた観てもらいますね」は、今後、また待ち時間があるときにはDVDを観てもらおうという工夫なのではと私は捉えました。
このクリニックが、私が感じたような戦略性を持ってそれらを行っているのかは分かりませんし、それはどちらでもいいことです。
大切なのは、それをどう自分の世界で活かすかです。
まだまだ気づきがありましたが、長くなったので、またの機会に。