私たちは“何のために話すのか?”
それは“伝えたいことがあるから”
今から何年も前にスピーチコンサルタントである西任暁子さんから教わった“話す目的”です。
こう言うと「そんなの当たり前じゃない」と思われるかもしれませんが、自分でない第3者に“伝える”ということは、実は相当な技術がいることです。
一生懸命TBIをしてもブラッシングが改善しない○○さん。
時間をかけてその重要性を説明したのに、一度もメインテナンスに来られない△△さん。
何度も注意をしているのに同じミスを繰り返す新人の●●さん。
これらはまさに“言葉にはしているが伝わっていない”からこその現象と言えます。
いつか伝わると信じて(?)、何度も何度も繰り返し言葉にしてみる、と数を重ねていくのも必要なことですが、この“何度も”は、話す方も聞く方も、正直ストレスです。
できる事ならば、数少なく、理想を言えば一回で伝わることを目指したいものです。
そんな“伝える”技術の一つに『質問をさせる』があります。
伝え下手な人は、何かを誰かに伝えるとき、つい全てを話してしまうことが多く、逆に伝え上手な人は、あえて全てを話さず、不完全な状態を作ることで、聞き手に『質問』をさせます。
例えば歯周病のリスクを伝える場面。
「歯周病は自覚症状なく進行し、気づいた時には手遅れというケースも珍しくありません。だからこそ定期的なメインテナンスが大切なのです」と全て話してしまわずに、
「歯周病の怖さは自覚症状なく進行するということです。気づいたときには手遅れというケースも珍しくありません」で一旦話すのを止めてみます。
すると、相手は「で、どうすればいいの?」と、質問という形でかえってくる確率が上がります。
質問が出るということは“知りたい”ということであり、興味がある(湧いた)ということです。人は誰しも興味を持った話はちゃんと聞いてくれますので、必然的に理解度が上がるのは言うまでもありません。
コミュニケーションやカウンセリングスキルを上げようとするとき、つい“いかにうまく話すか?”だけに意識がいきがちですが、“聞き手に質問をさせる”技術も高めていくことが必要ですね。
“話し上手は聞き上手”という言葉がありますが、これは“話す”と“質問”の両方を表わしている言葉なのかもしれません。